元リクルートで現在、転職バーを経営されているin-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”にとこなつ屋 店主 鈴木康弘氏登場。
カリフォルニアの青い空に育まれた原風景
8歳から11歳までの3年間を、鈴木はアメリカ西海岸、カリフォルニア州のサンホセで暮らしている。大手通信機器メーカーに勤務するエンジニアだった父の海外赴任。辞令からわずか1週間後には、家族四人でアメリカの地を踏んでいた。幼心を覆う不安の涙。頬を伝ったその痕が、乾く間もないほどの急な出来事であった。
サンホセはシリコンバレーの中心的な街で、すでに当時から多くの日本企業も進出していたが、鈴木が通う小学校には、日本人が一人もいなかったそうだ。「登校したけど、まず自分の教室がわからない。先生が迎えにくるまで、校庭で泣いていました…」「間もなくテストがありましたが、当時はまだローマ字を知らず、用紙に自分の名前さえ書けなかった(笑)。言葉の違いの中、そんなもどかしさを伝えることができないことが辛かったです」。心細いアメリカ生活のスタートだった。
「しかし、だいたい半年で英語での生活に慣れました」。多くの人がそうであるように、鈴木もまた次第に異国での言葉やコミュニケーションに適応していく。それは持ち前の、根っからの明るさやポジティブ思考にあったかもしれないし、周囲に多かったメキシコ系の人々から受けた底抜けな陽気さだったかもしれない。
ラテンのムードと、日差しをいっぱいに浴びて緑に恵まれた大地。そしてふと見上げると、東京では見たことのない高くてどこまでも広がる真っ青な空があった。以降の鈴木はたびたび『自由』をキーワードに用いる。「あの体験が自分自身や今の仕事を形づくっている」と話すように、そこに込められたイメージは、あの明るくおおらかでのびやかな風景なのだろう。どこにいようとも、その空から続いていくあの晴れ渡ったサンホセの空を、鈴木はさがしているのかもしれない。
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