in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”に株式会社てりとりー 代表取締役 福本浩幸氏登場。
本文より~
負けるが、勝ち。
祖父は「雀荘」を経営していた。祖父の背中をみて、育った。今回、ご登場いただいた株式会社てりとりーの代表取締役、福本浩幸氏の話である。
「両親は公務員ですから、どちらかというと、私は祖父に影響されているかもしれませんね。何しろ80歳まで仕事をしていましたから。そういう意味でも尊敬します」。
だからと言って、子どもの頃は、起業なんてことは考えなかった。
もっぱら、人生は野球。
「小学生の頃から野球です。正確には9歳から、27歳の社会人野球まで」。小・中の時には、チームは、大会で好成績を収めた。
「じつは、中学で私は補欠です。それが、ある意味、すべての始まりというか」と福本氏。とんでもなく、悔しかった。27歳まで野球をつづけた理由だともいう。
いや、それだけではない。どうすれば、いいか。ゴールから逆算して、プロセスを組み立てるという、戦略的な思考と手法を、この時、編み出している。
「そうですね。抜け道が好きで、抜け道を探すのも好きなタイプなんです。いまあるものじゃなく、潜在的なものを掘り起こすような」。
抜け道ではないが、大学進学もオリジナルの戦略で、見事、突破している。進学先は神戸大学。こっそり、その方法を聞いてみた。「秘策でもなんでもないんですが」と笑いながら教えてくれる。
「野球部の受験勉強は、3年の夏以降です。そこからが本番。進学するなら野球部があって強い、筑波か、横浜国立か、神戸か、だったんですが、神戸がちかいでしょ。だから、神戸だと。でも、そう簡単ではないですよね。で、計画を立て、後期試験に絞り込んですべてを賭けるんです。後期は、倍率は高いですが、センター試験の成績と実技だけなんです。私の場合は野球と小論文。こいつに賭けて、勝負です」。
なるほど。取捨選択とでもいうのだろうか。それにしても、この一連の話が、中学時代の補欠の話から始まっているのが凄い。ともかく、「負けるが、勝ち」。一度の負けから、福本氏は多くのことを学んでいる。
起業をめざし、酒造メーカーへ。
大学でも野球をつづけた。プロに進みたかったが、ドラフトのハードルはさすがに高い。ともかく、就職。起業をめざし、「某ビールメーカー」に就職する、そんなプランだった。
ところが、「某ビールメーカー」は最終面接で、まさかの不合格。「最終面接のために東京まで行って。大阪での面接で偉い人とビアガーデンで固く握手したはずなのに。なんでなんですかね/笑」。
それで、「宝酒造」?
「そうです。こちらで5年ですね。体育会系だし、背も声もでかいし、同期のなかではけっこう数字もいいほうだったと思います」。
担当していたのは、業務用酒販店。もちろん、その先の飲食店もフォローしていたそう。独立志向が刺激されないわけがない。
「ですね。私は、宝酒造を退職してから、1年半修業するんですが、うち1年修業させていただいたのは、当時、担当していたお客様です」。
「じつは、いまうちは沖縄料理がメインなんですが、その源流も、このお店なんです。夏だけですが、沖縄フェアみたいなことをされていたんですね。それをみて、『オレも沖縄だ』って」。
なんでも、福本氏は、沖縄出身でもなんでもないらしい。
ところで、仕事の一方で、福本氏は、社会人野球もマジメに取り組んでいる。しかも、23~27歳まではチームのキャプテンだった。その話も少し。
飲食を超えて行け
「社会人チームでキャプテンになりました。大学でも副キャプテンだったんですが、社会人チームとなると、やっぱりぜんぜん違います。年齢だってバラバラだし、バックグラウンドが異なります。しかも、上手下手もある/笑」。
大学では右向け、右でよかった。でも、そうならない。だから目標を設定した。
「京セラドームで行われる日本選手権出場」。
目標を立てればいい、と思っていたが、メンバーは動かない。どうすればいい。ゴールは設定したし、プロセスも立てたが、メンバーが動かない。
「そりゃそうですよね。じぶんじゃない人を動かすのに、いくら戦略を立てたって無駄だったんです。だから、みんなを試合が行われる、『京セラドーム』に連れていったりしてね。『ここで、プレーしたない?』『プロといっしょのグラウンドやで』。そういいながら、みんなにゴールをイメージしてもらったんですね。『京セラでプレーしたい』⇒『だから、勝ちたい』。心を動かすことはこういうことだったんですね。このクラブチームで、キャプテンを務めたことで、その意味を知りました。ハイ、今でも生きています」。
「飲食を超えて行け」。
話は飛ぶが、いま、福本氏は、スタッフにそう語っているそうだ。
「それも、一つのゴールだと思うんです。飲食ではたらいているのは、だいたい中卒や高卒の人たちです。それがいけないというのではないですが、中卒や高卒だからって、限界を決めてしまって欲しくないんです。給料だってそうです。飲食だから、いい給料をもらえへんと…。だから、いま私は『飲食を超えて行け』ってみんなに言っているんです」。
その先になにがあるか。いくつかの指標はあるが、福本氏もすべてを知るわけではない。
株式会社てりとりー 代表取締役 福本浩幸氏