in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”に「ワンカルビ」」を展開されている株式会社ワン・ダイニング 代表取締役社長 髙橋 淳氏登場。
本文より~
1人で140億円を動かす。
「淳くん」と言われたのだろうか、それとも「淳」と言われたのだろうか? 髙橋淳氏が、創業者であり、現会長の髙橋健次氏に出会ったのは奥様を介してだ。「私がまだ商社マンだったときに、後輩の紹介で知り合ったのが会長の娘さんだったんです。当時から会長は相当、怖い人で、会長と話すときは、子どもたちだって敬語です。ただ、私の場合、最初から気に入っていただいて」。
最初から話は盛り上がり、尽きなかった。そのとき、健次氏は、娘婿となる髙橋氏に「男なら経営を仕事にすべきだ」と語っている。
髙橋氏が、生まれたのは1961年。ダイリキの創業は1965年だから、両者は同年代生まれである。ダイリキは昭和47年に法人化(大力食品株式会社としてスタート)、昭和53年には商店街のなかに食肉店を開設するなど高度経済成長の波をとらえ事業拡大をつづける。
一方、髙橋氏は有名大学を卒業し、大手商社に就職するなど、こちらもすくすくと育っていく。
「商社では繊維を担当していました。裁量の幅が広く、自由度も高い会社だったもんですからヤリガイがあり、たいへんでしたが楽しかったですね。私1人で、年間140億円を扱っていましたから、スケールの大きさはいうまでもありません」。
140億円を自身の裁量で動かす。たしかに、ダイナミックだし、楽しいはずだ。髙橋氏も商社を辞めるつもりはなかったと言っているが、ではどうして、義父の下にはせ参じることになったのだろうか?
「男なら経営者に」という期待と暗示。
「商社を辞めるつもりはぜんぜんなかったんですが、義父と話をするうちに、経営という仕事に魅了されていきます。『男なら経営を仕事にすべきだ』という言葉の意味もだんだんわかってくるんですね」。
それで決断?
「そうなんです。私も男ですからね。やってみるか、と。ただ、ダイリキに入社しても当然のことですが、経営者の切符が約束されていたわけではありません」。
ダイリキに入社した髙橋氏は、店舗開発課長からスタートする。ある意味、商社マンだった髙橋氏には、最適な仕事だ。「今思えば、いきなり経営に参加するのではなく、下から上がっていったことに意味がありました。外部の人間がいきなりトップというのは、ダイリキの風土になじみません。ダイリキは、プロ集団なんです。義父からは、店舗経営や組織について、レクチャーを受けつづけていました」。
健次氏は早くから髙橋氏を2代目候補と認めていたのかもしれない。健次氏はつねに期待し、髙橋氏は、つねに、その期待に応えた。2人の関係が糸を織りなすようにして強固なものとなり、同時にダイリキもまた、強力な会社に育っていく。
社長就任。
髙橋氏が、ワン・ダイニングの社長に就任するのは、2008年に会社が分社化したとき。すでに髙橋氏は、プロ集団のなかでも、たしかな地位を確立していた。
「私が、入社した当時は焼肉に対する物件オーナーのイメージが悪くて。私が入った時に、ダイリキの焼肉店はまだ2店舗だったんですが、この2店舗が大爆発して。そう、それで『事業のもう一つの柱に育てていくぞ』ってなるんですが、物件がない/笑」。
店舗開発課長の髙橋氏はいきなり重要なミッションが課せられる。「それで、郊外に目をつけたんです。郊外なら、イチから作れますからね。だれにも文句は言われない。そうやって、店舗数を広げ、BSEも乗り越えきたんですが、分社化した2008年には、リーマン・ショックです」。
焼肉は言っても、庶民には高根の花だ。財布の紐が締まれば、来客も少なくなる。どうやって、乗り越えたんだろうか?
社長に就任し、もっとも注力したのは「サービス力と接客力」と髙橋氏は言っている。
「もともと、うちはダイリキからスタートしていますから、肉のプロなんです。だから、肉のプロと、サービス・接客のプロがいっしょになれば、最強でしょ。うちが、テーブルオーダーバイキングというスタイルを取っているのは、サービスと接客に挑んでいるからなんです」。
ただ、注力するといっても、そうそう向上しないのが、サービス力と接客力だ。「人」を動かすのは、難しい。
「社長に就任してから、取り組んだのが新卒採用です。とくにインナー採用にちからを注ぎました。じつは店舗社員の6割が元アルバイターなんです。そのアルバイトも45%が紹介による採用です。採用経費はもちろんですが、互いを知ったうえでの『就職』であり、『採用』ですからね。そこがいいと思っているんです」。
いい循環が生まれている。
「そういう好循環を生み出しているのが、うちの様々な制度、また高い給料や休日などです」。
実際、どうなんだろう?と同社の採用ページを観てみた。
イキイキとはたらく、スタッフたちのいい絵が並んでいる。髙橋氏がいう通り、待遇もよく、様々な制度が整っている。だが、それだけではなかった。
先輩のインタビューのなかに、次のような一文があったので引用する。
「『お前がこの店を変えるんや』。そう、熱く語ってくれたブロック長の一言。思えばあの言葉が、僕の人生を変えたんだと思います」。
当時、この先輩は、アルバイトだったそう。アルバイトにもまっすぐ向き合う。こんな素敵な会社は、たしかに少ない。これなら、たしかにインナー制度も機能だろう。トップの髙橋氏が何を大事にしているかも観えてくる。
・・・続き
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