in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”に株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長 藤﨑 忍氏登場。
本文より~
専業主婦からの転身。39歳。初の社会人に。
4人兄妹の長女。兄2人と、妹が1人。父親は、区議会議員や都議会議員を歴任。母方祖父も都議会議員をやっておられたそうだ。その一方で、ご両親は、祖父が開業したお煎餅屋や保険会社を経営されていたという。
「0私は小学校から青山学院(初等部)に入り、青山学院女子短期大学を卒業しました。短大を出て、すぐに結婚。じつは39歳まで専業主婦だったんです」。
旦那様も、区議会議員。政治家一家である。専業主婦といっても政治家の妻。旦那様をバックアップされていたにちがいない。小さい頃から、政治家の父親の背中を見てきただけに、政治家の有り様も理解されていたはずだ。
学生時代の話をたずねると、「高校ではハンドボールをやっていて、今でも当時のメンバーとは仲がいいんですよ」と笑う。
どうして、専業主婦を辞められたんですか?という質問には「夫が病になり、私が働かなければいけなくなったから」という返答。なんでも「渋谷109」のブティック店長が、「新たなキャリアの始まり」だそう。
初、社会人ですね?
「そうなんです。風景がガラリと変わります。私が働いていたブティックは、友達の母親が経営されていて、後継者を探していらっしゃいました」。
およそ5年勤務。政治家だけではなく、経営の才も譲り受けていたんだろうか。仕事は好調で、5年間で年商は倍になる。
アルバイト、4ヵ月のち、1号店オープン。
「5年目に会社の方針が変わり、私自身は退職し、44歳の10月から翌年の2月までの4ヵ月、居酒屋でアルバイトをしました」。
経営者候補から一転、アルバイトへ。
どう思われていたんだろう?
「私が働かないと生活ができないですからね。ただ、アルバイトを続けるつもりはなく、最初は、渋谷109にアパレルショップを出店しようと計画していました。でもね。競争率が高い」。
それで、新橋ですか?
「そう。しかも、ブティックじゃなく、居酒屋です/笑」。
45歳、藤﨑氏は、『ニュー新橋ビル』に『そらき』をオープンする。
「8.5坪の小さなお店です」。
そこがヒットした?
「ありがたいことに、ご好評をいただいて、1年半後には2店舗目をオープンする運びになりました。2店舗目は、当時、流行っていたイタリアンバルです」。
創業時、ブティック時代の部下を1人誘っている。
「その子が、もう独り立ちできる経験を積んでいたんですね。だから、私も新たな道に進もうと決心できたんです」。
どういうことだろう?
日本最古のハンバーガーショップ。
じつは、このあと藤﨑氏は、今回の主題となる「ドムドムフードサービス」に入社している。「ドムドムハンバーガーは、ダイエーの創業者、中内功さんが創業された日本で一番古いハンバーガーショップです」。
調べてみると、創業は1970年。東京町田にオープンした1号店が、日本に初めてオープンしたハンバーガーショップだとわかる。翌1971年、銀座にマクドナルドがオープンしているから、たしかに、ドムドムハンバーガーがいちばん古い。
「90年代には、店舗数が400もありましたが、私が関わることになった2017年には36店舗まで縮小していました(現在は27店舗)。その時、ドムドムハンバーガーを買い取り、再生に乗り出したのが、㈱レンブラントインベストメントという会社です。そちらの専務からお声がかかりました」。
<うちのハンバーガーの味をみてくれないか?>。
そんな一言だったらしい。
「私のお店のお客様でした。味と接客をいたく気に入っていただけ、ハンバーガーだが、味をみてくれないか?と。まさか、社長になるなんてその時は思っていません」。
藤﨑氏、50歳の時の話。
「先ほども言ったように、創業時から一緒にやってきたスタッフが独り立ちできるようになっていましたので、じゃぁ、『そらき』は彼女に任せて、私は『違うことをしてもいいかな』と、アドバイザリー契約を結びました」。
ドムドムハンバーガーの再生。そのはじまり。
昭和生まれの人間にとって、「ドムドムハンバーガー」は、一度は聞いたことがあるハンバーガーショップ。むろん、藤﨑氏にとっても知らないショップではなかったはず。
しかし、その名は、平成の時代になり、だんだんと忘れていく。そのなかで、再生の一部を託された藤﨑氏には、どんな決意と関心があったのだろうか?
「商品開発と接客のトレーナーというのが、私の最初のミッションでした。その後、社員になり、新店がオープンする際に店長を務め、翌年から東日本エリアのスーパーバイザーに就任しました」。
スーパーバイザーに就任するまでの経験は、1年弱。それ自体、大抜擢だ。
「たしかに、39歳まで専業主婦でしたからね。前職が好調だったものの、経営経験は2店舗だけ。むろん、再生の経験もありません。今、私のことを『すごい』と言ってくださる人がたくさんいますが、私にすれば、私を誘ってくださった専務が一番すごい」。
たしかに、オファーした専務は、すごい。
ごいっしょに。
翌年からスーパーバイザーとして奮闘したものの、決算が赤字だったことを知り、ショックを受ける。「赤字決算は予想していましたが、経営メンバーじゃないので、結果だけ聞かされるんです」。藤﨑氏は「経営に直接アプローチ出来なければ再生に関わる意味がない」と思ったそう。
「そう、だから、私にも決裁権を、と言い続けたんです。結果、その年の8月に『取締役社長に』というお話を頂きました。もちろん、社長になるとは思っていませんでしたから、青天の霹靂です/笑」。
それは、そうだろう。責任の重さがちがう。ふつうなら、ひるむところだ。しかし、藤﨑氏は再生のリーダーという要職に、むしろ前向きに就くことを決意する。
店舗数が少なくなったといっても、昭和の人間ならだれもが知るハンバーガーショップ。それだけに再生のゴールは、数字の話だけではないだろう。
「2018年8月に社長に就任し、3年で黒字化を達成致しました。その結果はもちろん、数字は大事な指標の一つですが、一方で、私がずっと考えてきたのは『ドムドムハンバーガー』がどこに向かっていくかでした」。
ブランドコンセプト?
「そうです。毎月、新商品をリリースして、美味しいとおっしゃっていただくことが出来ました。併せてイベントにも積極的に参加しました」。
新メニューとイベントへの参加は、消費者への直接的なアプローチである。「じつは、こういうアクション・チャレンジをする度に、想像以上のリアクションを頂戴するのです」。
SNSとかで?
「ツイッター等も含めてです。 新商品発売の度に店舗へ また イベントにも足を運んでくださる方が沢山いらっしゃるのです。2020年で『ドムドムハンバーガー』は50周年でした。たしかに、一時期と比較すると店舗数は激減していますが、それでも、これだけの反響をいただけるっていうのは消費者の皆さんに守られ、育てられてきたことの証。それ自体が『ドムドムハンバーガー』の立ち位置なんじゃないだろうかって思ったんです」。
だから、「消費者に寄り添う」というコンセプトも生まれたわけですね?
「私は、飲食店の美味しいは当たり前と思っています。だったら、どうするか。答えは、『おいしい』の先を行く商品を開発していくことなんです。そのプロセスの中で大事なことは、お客様に寄り添うことだと、それが『ドムドムハンバーガー』なんだと。そういうことをブランドのコンセプトに置きたいと思っています」。
スタッフはもちろん、消費者も置き去りにしないということでもある。
いうならば、「ごいっしょに」だ。
「さぁ、ごいっしょに。食事を楽しみましょう。『ドムドムハンバーガー』を育ててまいりましょう」。ドムドム党、党首の一言が響いてくるようだった。
マスクは、起爆剤ではなく、接客剤。
ここで、大ヒットしたメニューを一つ挙げろと言われれば、間違いなく、2019年、発売の「丸ごと!! カニバーガー」を推すことになる。「ソフトシェルクラブ」を、贅沢にまるまる一匹挟んだハンバーガーだ。税別900円だが、SNSで消費者を巻き込み、大ヒット。
「そうですね。カニバーガーのような新メニューがドムドムハンバーガー再生の起爆剤です。50周年を迎え、黒字化も見えてきた、2020年には、大々的にイベントも行い、再生への道を、より確かにするはずだったんですが、コロナ禍の下、イベントも断念しなければいけなくなりました」。
「さぁ、ごいっしょに」といっても、どう進めばいいのか。ふたたび、模索がはじまる。
意外な突破口だった。
「じつは、コロナ禍の下で最初に話題になったのは、ハンバーガーじゃなく、マスクだったんです/笑」。
マスク?
「そうです/笑。マスクが不足している時期があったでしょ。あの時に、スタッフを守るためにロゴ入りのマスクを作ったんです。でも、スタッフばかりじゃなく、皆、マスクがないと悩んでいらっしゃったんで、少しでも役に立てればと、レジの横で販売をひっそり開始したんです」。
「ところが すぐに長蛇の列が出来てしまった」と藤﨑氏。SNSで、いきなり5万の「いいね」がつくほどだったというから、列の長さもイメージできる。
「逆に密を作ってしまったわけで、これじゃいけないと、すぐにオンラインにチェンジします。それでもどうでしょう。累計15万枚までいったんじゃないでしょうか」。
どんな商品なのだろうと検索してみた。「楽天」で販売されているようだったので、クリックするとドムドムハンバーガーの「ぞう」のロゴがついた、かわいく、おしゃれなマスクがクローズアップされた。マスク不足が解消した現在でも、これなら一つ欲しくなる。
いうまでもなく、このマスク。売り上げを狙ったわけではない。少しでも「人のために」という思いからスタートしている。いうならば、起爆剤の一つではなく、消費者と向き合う、ドムドムハンバーガーの宣言であり、消費者との接客剤の一つという気もしなくはない。
・・・続き
株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長 藤﨑 忍氏
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