in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”にさか萬株式会社 代表取締役社長 坂巻章宏氏登場。
本文より~劇団員までの人生。
「坂巻牧場っていうと横浜あたりでは結構、知られていたんですよ」と、今回ご登場いただいた「さか萬株式会社」代表取締役、坂巻氏。牧場は祖父の代の話。「それから牛乳屋をやり、あとはビル経営などを始めます」。
今なら、「横浜に牧場?」と思ってしまうが、坂巻社長が生まれた頃は、横浜もまだ田舎町だったのかもしれない。「兄弟は3人です。母の影響でしょうか。長兄は音大を卒業し、音楽教師に。次兄は商社でデザイナーをしています。私だけです。ジプシーみたい人生を送るのは」。
そう言って笑いながら、人生を語ってくださった。
「私が生まれたのは1963年。昭和のド真ん中です。上2人とちがって、勉強が大嫌い。いたずらっ子で、とにかく先生によくぶたれた。当時は拳骨も、OKだったからね」。
成績は下から10番目。しかし、図工だけは学年で1番。展示会の常連で、表彰もされている。「人間、取り柄っていうのはあるもんでさ。図工と、そうだね、器械体操もしていたから体育もいいほうだった。ただ、勉強がだめ笑」。
中学時代、1年下に、あの俳優の阿部寛さんがいたらしい。「当時から背が高かった」と笑う。
「高校は都内の私学に進みます。舟木一夫さんや山田隆夫さんの出身校です」。
渋谷もちかかったそうだ。
「在籍したのは、1年~1年半くらいですが、劇団に所属します。あの大竹しのぶさんも在籍されていた劇団です」。
時代はちょうどバブル経済に向かっていく頃。
転職数、合計7社。
「最初に就職したのは、アパレル会社です。ここから私のジプシー人生がスターするわけですが、こちらは案外、長かったですね。10年くらいいましたから」。
入社当時は、17店舗だったが、10年で50店舗にまで拡大。10代~20代後半の女性をターゲットにみるみる業績を拡大していったそうだが、バブル経済が崩壊すると、業績が悪化。バイヤーまで昇格した坂本社長も、やむなく退職することになる。
ファミリーマートの本部に転職。フランチャイズオーナーの不採算店を立て直す仕事に奔走した。
「うまくいってないショップは、掃除ができてない。そういうショップに限って商品の補充も疎か。細かいことの積み重ねなんですね。そういう勉強はできたように思います」。
面白そうな仕事ですが、2年で退職されるんですよね?
「そうなんです。つぎは、水商売です。横浜で、店長やオーナーも務めました。今でいうクラブやキャバクラです。このあと、アルバイト生活に突入します。トータル5~6年かな。いわゆるつなぎです」。
合計7社。「ま、いろいろ経験しましたね。たとえば、このあと、有名な布団の訪問販売の会社に就職します。1年ちょっとかな。成績は悪くなかったんですが、もともと運転免許がなかったから、移動が面倒くさくなっちゃって笑」。
転職する度、経験値があがる。
劇団員からスタートし、アパレル、ファミリーマートの本部、水商売、布団の訪問販売。まるで、共通項がない。ただ、職探しに苦労した経験はないそうだ。
「売り込む才能はあったんでしょうね。このあと派遣会社に就職するんですが、営業トークもうまくて入社すぐに7社受注し、1ヵ月で所長に昇進します」。
「劇団での経験がトークにみがきをかけた」と坂巻社長。共通項はないが、様々な業界で獲得した経験値は、高く積み重なっていく。ただ、リーマン・ショックで派遣切りがスタートし、業績が悪化。会社をあとにする。
派遣会社を退職したあとは、スポーツメーカーで、1年半。経営を再構築する7名のプロジェクトチームに選抜される。「理論的な経営ノウハウはこちらでマスターします」。
組織作りのノウハウも、この時にマスターしたという。転職回数で、人を測ろうとする採用担当者がいるが、回数そのものは案外、意味のない指標かもしれない。
15坪の、オンステージ。
「『じぃえんとるまん』は、ゴールだったかもしれないですね。ただ、『じぃえんとるまん』と出会わなかったらどうだっただろうって思います。転職回数が天文学的になっていたりして笑」。
お客さんだったんですよね?
「そうなんです。『じぃえんとるまん』の総本店ですが、そちらの常連客だったんです笑。とにかく、楽しいし、元気になる。これはいいと思ってある時、社長に直談判させていただくんです。で、話しているうちに意気投合して、『じゃぁ、フランチャイズで』って話になるんです」。
ファミリーマートの経験がいきてきますね?
「そういうことです。『じぃえんとるまん』は15坪程度の立ち飲みです。私の創業店は二俣川。賃料30万円。500万円用意していたんですが、ちょっとたりなかった。だから、借入もしています。妻も賛成してくれて、最初は夫婦2人でスタートしました」。
業績はどうでしたか?
「初月はぜんぜんだめでしたね。でも、心配はしていなかった」。
どうしてですか?
「お客様はたしかに少なかったんですが、いらしてくださったお客様からは大好評だったんです。だから、そのうち、という確信めいたものがあって。おかげ様で、その通りになります」。
劇団と布団の販売、派遣会社でみがいたトークが客の心を鷲掴みにする。むろん、店内はピカピカ。ファミリーマートで学んだショップ経営の基本である。
ちなみに、スポーツメーカーでは、経営スキルを、水商売では接客スキルを手にしている。いくつものスキルが、客を離さない。
15坪の立ち飲み店は、坂巻社長のオンステージになった。