in-職(いんしょく)ハイパーの“飲食の戦士たち”に株式会社ぼんた 代表 齋藤敏幸氏登場。
本文より~福井県、小さな県で飲食店オープン。
福井県は観光名所もある豊かな県だが、福井で事業をしていると、地方ならではの悩みもあるそうだ。今回、お話を聞いたのは、福井県で人気の飲食店を複数経営するぼんたグループの代表、齋藤敏幸さん。
齋藤さんに聞いて初めて知ったが、福井県は有効求人倍率が、日本でトップらしい。トップと言っても、事業者からすれば喜べないほうのトップである。
とにかく人手不足らしい。飲食店といえば、学生のアルバイトが定番だが、大学生の数がそもそも少ないそうだ。そんななかで、齋藤さんはどのようにして飲食店を経営しているのだろうか。
インタビューはそんなところから始まった。
「じつは、2017年に串カツ田中のフランチャイズに加盟しています。社員が2人で、週休2日制って、ほんとかって思って。やりかたがあるんならそれを知りたくて」。
2020年にはリンクアンドモチベーションの、モチベーションエンジニアリングも採用している。効率性と同時に属人的に偏ることがない組織づくりも重要な課題だったからだろう。
ところで、このような組織づくりをめざす背景には齋藤さんが飲食ではなくアパレル出身ということも挙げられるのではないか。
では、そのあたりも深く聞いてみよう。
芸能生活は、数か月で終わる。
「私は1978年、生まれです。少年野球をやり、中学からテニスです。ごく普通の少年でした。中学3年生の時に父親が他界します」。
大きなショックだった。「長男として家を守っていかなきゃいけない」と思ったと語っている。だからではないが、芸能人をすることになった。
「芸能事務所のオーディションを受けたのは、高校3年生の頭ですね。合格して、芸能事務所に入りました。月1、夜行バスに乗ってレッスンに通っていました。もちろん、進学も就職もしなくてよくなります」。
高校時代には30~40人に告白されたと言っている。なんともうらやましい話だが、それはそれでたいへんだったにちがいない。
ともかく、高校を卒業したことで芸能生活がスタートするのだが、じつは、その年の夏には福井にもどっている。「芸能人が帰ってきた」とさわぎになった。
「福井がいなかってことを表すような現象ですよね。とにかく、ぼくもちょっと格好つかないと思って、当時、キムタクさんのビューティフルライフがこちらでも大ブレークしていて、アパレルだったら恰好つくんじゃないかと」。
<それでアパレルを始めるわけですね?>
「そうです。きわめてシンプルな理由ですね。福井のセレクトショップで4年はたらきます」。才覚があったんだろう。すぐに店長になっている。
独立2ヵ月、消費者金融に駆け込んだ。
4年後、齋藤さんは独立を果たす。
「父親の保険金1200万円使って開業しました。当然、親戚一同はもう反対です」。失敗したら高級車買ったと思ってあきらめるといって押し切ったそう。
「商売の怖さをまったくわかってなかった。開業すれば、なんとかなるっていう浅はかな考えも、頭のどこかにあった気もします」。
結論からいうと、失敗はしなかった。ただ、借金、まみれになった。
「会社員の時に、300万円をセールスしていたんで、その感覚で仕入れをして、スタートするんですが、初月から150万円しかセールスできず、買い取りだったもんですから、返品もできません。2ヵ月でキャッシュが尽きます」。
高級車1台分が消えただけでは済まなかった。撤退もままならない。資金を追加していかないといけない。
「母親に150万円、消費者金融に400万円」と齋藤さんは苦笑する。
「取扱ブランドが爆売れして、ピンチを脱します。仕入れもだんだんとわかってきたので、調整しながら、そうですね、2年くらいかけて返済できました」。
借金を返済したことで、気分は落ち着いたが、心はざわついたままだった。「いつどうなるかわからない」。そのことが頭から離れなかったそうだ。
なにかをしないと、心のざわめきがとまらない。
「軌道に乗りだしたこともあって、ショップ数を拡大したかったんですが、ブランドにルールがあって、それ以上のオープンが認められませんでした。だからといって、単独のショップでは不安が募るばかりだったんです」。
<だから、飲食を始められたんですね?>
「そうですね。飲食の知り合いがいたりしたもんですから、絶対、飲食というより、たまたま飲食だったというイメージですね」。
「たまたま」というから、軽いイメージで聞いていた。だから、投資額を聞いて驚いた。なんでも、30坪、50席。スケルトンからで、ざっと投資額2000万円。
「ダイニング・バーです。26歳の頃。また、借金をするわけですが、それは怖くなかった。何にもしないというのが怖かったです」。
<いかがでしたか?>
「おかげ様で、アパレルのお客さんがついてきてくれて」。アパレルと飲食はたしかに親和性がある。ハイセンスのショップなら尚更。
「コンパとか、結婚式の二次会などでも、ひんぱんに利用いただいて」。
繁盛する。だが、まだ心はざわついている。
アパレルと飲食の格段のちがいは、労働環境にあり。
28歳、齋藤さんは郊外型の個室居酒屋をオ-プンする。100席の大型店。投資額は3500万円。その後もオープンを重ね、2024年現在、「ぼんた本店」をはじめ、8店舗のオリジナルブランドとFC店、ほかに福井医大のキャンパスでもランチを提供している。
スタッフの数も、もちろん、多くなる。
「アパレルとちがって飲食は驚くことばかりでした。アパレルショップはホワイトだったんですが、飲食は長時間労働でへたをすると休みもない。はたらいている側の笑顔の奥を知っていますから、お客様のたのしそうな表情をみると、そのギャップに驚くしかありませんでした」。
なにがどうなっている? 飲食人は熱量で動いている。でも、そうなんだろうか。
「飲食は人がつづかないでしょ。アパレルの時は、だれも辞めなかったのにどんどん辞めていく。もう、経営者の私が無理になって、いわゆる働き方改革を決行します」。
「もちろん、私は料理をつくれないし、居酒屋ではたらいたこともありません」。だけど、一般常識があったと齋藤さんはいう。だから、飲食の常識ではなく、一般の常識をものさしにして福利厚生や労働環境のレベルをつぎつぎアップデートしていった。
もちろん、戦略も齋藤さん流。「アパレルショップっていうのは付加価値をお客様に伝えるのが仕事なんです。そのノウハウを居酒屋に応用します。単純な例を挙げれば、『からあげ』じゃなく『ジューシーからあげ』というネーミングにするだけで、印象もかわってくるでしょ。それに、ジューシーなほうが旨い(笑)」。
・・・続き
(社長記事やグルメ情報など飲食の情報はキイストンメディアPR事業部まで)
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